ATR OPEN HOUSE 2022 ロゴ

講演

LECTURE

  • 社長講演 10/6(木) 13:00-13:30

    人・ロボット共生社会2030と実現への壁

    代表取締役社長
    浅見 徹

    40年ほど前、未来学者のAlvin Tofflerは、第3の波(情報革命)が進むと、夫婦分業や核家族の拘束から解放され、多様性を認める社会が到来すると予測しました。確かに、政治権力や経済力は分散し、国際的分業も進み、労働の質・量ともに大きく変化しました。当時課題だった女性の地位向上も日本以外の多くの国では改善し、政治や経済で指導的役割を担う人材が輩出しています。一方、我が国は2000年前後の技術を前提とした精緻な社会が固定化し、当時目標だったe-Japan構想はとん挫し、20年後の今日「デジタル」をキーワードに再出発を試みています。タイムマシンに乗って20年前の市役所に行っても今日と大差ないと感じるはずです。技術に対して効率は良いがあまりに硬直的なシステムを作ると技術革新ができなくなるのは、火縄銃時代が二百数十年続いた軍事の歴史が教えてくれます。日本はその落とし穴に落ちたようです。これが、SARSでアジアに範を示した日本が20年後のコロナでアジアに学ぶことになった主因でしょう。
    日本社会の最大の課題は少子化と女性の社会進出にあると言われてきました。ATRはこの問題を解決する鍵が人・ロボット共生社会を作ることにあると考え、研究開発を進めております。子育てのため立身出世(社会的な自己実現)を諦めるのも、立身出世のために子育てを諦めるのも同じようにばかげています。両立できる技術開発が必要です。それがロボットとの共生です。ただし、新しい技術で新しい生活を享受するには、技術を進化させるだけではなく、我々自身も進化しなければなりません。過去20年の日本の失敗は我々が自分自身を変えようとしなかったからと思います。終身雇用全盛時代に一般的だった企業内のリカレント教育はすっかり廃れ、かといって社外でのリカレント教育も普及していません。このため、同じ技術と同じ知識でルーチンワークしていたのが実態です。皆でルーチンワークしていれば安心感は醸成されますが、21世紀は個人も国家も未曽有の競争社会です。大阪・関西万博の唱えるいのち輝く未来社会とは、新しい技術をどんどん取り入れ、我々自身も変え、新しい社会を創り享受する市民が担う社会ではないでしょうか?もっとも、どう変わらなければならないかは、一人一人が自分で考えなければなりません。リカレント教育はその柱と思います。

  • テーマ講演(深層インタラクション) 10/6(木) 13:30-14:00

    サイバーフィジカル社会での新たなライフスタイルの提案
    ~人が主体的に活躍できるインタラクション技術の研究開発~

    インタラクション科学研究所 環境知能研究室 室長
    内海 章

    本講演ではこれまでにATRで進めてきたVR(仮想現実)、人の動作計測、自動車運転支援などに関する研究開発を振り返りながら、サイバー空間とフィジカル空間におけるインタラクション技術について議論します。
    仮想現実の研究はその初期から仮想空間と現実空間の融合あるいは現実空間の拡張を視野に入れて進められてきました。しかし、当時の技術では、仮想空間と現実空間の融合を十分な精度で行うことは困難でした。その後、身体動作の計測技術、シミュレーション技術などの開発が精力的に進められた結果、その精度は格段に向上し、両者の間をシームレスに行き来することも可能になりつつあります。現在では仮想現実に限らず人間の知的活動の多くが計算機のなかの世界(サイバー空間)で行われています。これからもより多くの活動がサイバー空間で行われるようになるでしょう。しかし一方で、人間は現実空間の存在です。働く、暮らす、育てるなど現実空間における人間の営みはこれからもなくなることはありません。高い自由度を持つサイバー空間とは異なり、現実空間での人間は様々な制約を抱えています。人間の自由な活動を奪うことなく現実空間における人間の活動をより豊かにするためには、認知的・身体的な能力の限界、空間的な制約を乗り越えて現実空間における人間の能力を拡張する必要があります。人間を主体とすることによって、機械による支援を人間が自身の能力の拡張として意識することができれば、人間はより意欲的に活躍できるようになると考えられます。 人間の主体感を損なわずに高度な車両制御を実現する自動車協調運転や遠隔操作型の身代わりロボット/CG エージェント(サイバネティックアバター)を使って、人々が働く、暮らしを楽しむことを目指すアバター共生社会プロジェクトについてもご紹介します。

  • テーマ講演(無線・通信) 10/6(木) 14:00-14:30

    Communication Localityに着目したレジリエントICTの研究開発

    波動工学研究所 所長
    坂野 寿和

    本講演では、対災害ICTをテーマとした波動工学研究所の研究開発を紹介します。地震や台風など大規模災害が発生すると、通信設備の被災やネットワークへのアクセス集中のために通信網が使えない、いわゆる通信途絶地域が出現します。通信途絶地域の中では、多くの場合、安否確認や被害・避難情報の周知、収集のために爆発的な通信需要が発生しています。この著しい通信需給ギャップを少しでも緩和するために、我々は、可搬型ローカル通信システム;LACS(Locally Accessible Cloud System)を提唱しています。LACSは、小型サーバ、Wi-Fiアクセスポイント、バッテリーなどを可搬型のケースに収容したもので、小型サーバには、昨今のソーシャルネットワーキングサービス(SNS)で提供される基本的な機能を実装しています。利用者は、スマートフォンなどWi-Fi機能を持つ端末から、小型サーバへアクセスして、LINEやFacebookなどのSNSでおなじみのチャットや掲示板といった機能をインターネットがない環境でも使えます。ただし、使い始めるときにユーザ登録が必要、通信ができる範囲はWi-Fi電波が届く見通し100m程度といった制約があります。
    LACSは、通信途絶環境下で活動する自治体、警察、消防、自衛隊、医療機関などによる活用や、避難所における被災者間の情報共有、連絡手段としての活用が期待されています。また、インターネットが十分に整備されていない途上国における活用も想定されます。ATRでは、LACSのプロトタイプを開発し、実証実験等を通してこれらのユースケースに対する有効性評価を行ってきました。 講演では、LACSのコンセプト、開発したプロトタイプ、実施してきた実証実験についてご紹介するとともに、次のステップとして社会実装に向けた展望を示します。

  • テーマ講演(生命科学) 10/7(金) 13:00-13:30

    体内精密情報デジタルツインシステム

    佐藤匠徳特別研究所 所長
    佐藤 匠徳

    佐藤匠徳特別研究所では、ヒト体内精密情報の成り立ちを解明するため、生物学的に深淵でインパクトフルな基礎研究及びそれらを社会へ還元する応用研究を展開しています。この目標を、生物学的情報を「測る」「モデル化する」「予測する」「制御する」ことで実現し、その集大成として目指しているのが「体内精密情報デジタルツイン」(図1)です。このシステムにより、体内の分子・細胞を含むナノ〜ミクロスケールの、精密で個人差を反映した体内時空間情報がサイバー空間に再現され、同時に個々人に最適化された体内異常の精密な制御が可能になります。したがって、いつでも・どこでも、自身の体内の異変が早期に感知され生体を防御・修復し、その効果を把握できるようになります。さらに、本システムにより、体内の分子・細胞・臓器の動態及び機能がリアルタイムで可視化され、これまで見ることのできなかった生命現象が見えるようになります。科学において「見えなかったもの・ことが見える」ことは概念的ブレークスルーにつながります。したがって、「本システムの完成=生命科学における概念的ブレークスルー」が起こることが期待されます。本講演では、このシステム研究開発の最新情報を発表いたします。

  • テーマ講演(事業開発) 10/7(金) 13:30-14:00

    Society 5.0への貢献に向けたけいはんなグローバルイノベーションエコシステムの構築

    経営統括部・事業開発室 代表取締役専務
    鈴木 博之

    ATRが2017年度から構築を開始したグローバルイノベーションエコシステムは、中核連携機関として従来のイスラエル、インド、米国・ニューヨーク、カナダ、スペイン・バルセロナにドイツ・バイエルン(本年5月にバイエルン州経済省企業誘致部とMoU締結)が新たに加わるとともに、国内でもけいはんな学研都市を越えて京阪神および東京のイノベーションエコシステム等との連携が進み、現在では国外30ヶ国の255機関および国内456機関を含む700+機関との広範かつ強固なネットワークへと発展しています(本年6月末現在:図1)。このネットワークをベースとし、解決法主導型プラットフォームKGAP+および課題解決型プラットフォームKOSAINN/KOSAINN+という2つのプラットフォーム上で実施される国内外のスタートアップとのオープンイノベーションを通じた世界の経済や社会における様々な課題の解決や人々の生活に革新(ヒューマンライフ・イノベーション)をもたらすことを目的に活動を行っています。
    これまでに支援したスタートアップは、合計168社(国内92社、国外76社)を数えます。この内KGAP+ 第1~7期に参加したスタートアップ96社は、ヘルスケア・医療、材料・スマートデバイス、製造・建設テック、アグリ・フードテック、ロボティクス、AI・データ、モビリティ・スマートシティ、IoT・先進ネットワークなど世界の経済・社会ならびに人々の生活における課題解決に直結した16の技術分野に分類されます。また、KGAP+ 第1~6期に参加したスタートアップ79社はSDGs(Sustainable Development Goals)に関して、①SDGs17の目標の内、14の目標に貢献、②参加全79社が合計158の目標に貢献(平均1社当たり2つの目標に貢献)などのSDGsへの貢献を含む事業を推進しています(図2)。
    日本が目指すべき未来社会の姿として内閣府が提唱したSociety 5.0は、「課題先進国として、IoT、ロボット、AI、ビッグデータ等の社会の在り方に影響を及ぼす新たな技術をあらゆる産業や社会生活に取り入れ、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムを活用し、イノベーションから新たな価値を創出することで経済発展と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会(Society)」であり、我々が進める活動は、その進め方と目標の両面で高い整合性を持っています。さらに、けいはんな学研都市では、京都スマートシティExpoを2014年に開始するとともに、関連分野における住民参加型の実証実験に豊富な実績を持つなど、Society 5.0の先行的な実現の場として位置づけられるスマートシティに関して以前から積極的に取り組んできています。 本講演では、我々の活動の概要と到達点をSociety 5.0への貢献という観点から紹介します。